第6回「自然再生のサイエンスカフェ」レポート

第6回すいたサイエンスカフェは、10月15日(土)に「自然再生のサイエンスカフェ」と題して開催しました。

話題提供にお越し下さったのは、兵庫県立大学・環境人間学部の豊田光世 先生です。
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  中央が豊田先生

まずは、豊田先生の自己紹介を伺いました。
豊田先生は、「地域共同管理空間(ローカル・コモンズ)の包括的再生の技術開発とその理論化」、「トキと人の共生を目指した水辺づくり座談会」、「子どもの哲学日米交流事業」などなど様々な活動をされていますが、今回は、「こごめのいり再生プロジェクト」のお話をしていただきました。

新潟県佐渡島にある加茂湖の「こごめのいり」という小さな入り江をフィールドに、水辺を再生するプロジェクトで、佐渡島加茂湖水系再生研究所(通称:カモケン)にて、地域住民・漁業者・行政関係者等の多くの方々と連携しながら、加茂湖水系の自然の再生とその周辺の地域づくりに取り組む活動をされているそうです。

因みに、豊田先生は、「光世という名前から男性だと勘違いされる事があります」・・・とおっしゃっていたのですが、女性の先生です。佐渡島加茂湖水系再生研究所の“理事長“と言うと、威圧感のある方を想像されるかもしれませんが、豊田先生はふんわりとした雰囲気で、カモケンの「みんなが先生、みんなが生徒」というモットーがぴったりの方です。
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  「こごめのいり」再生中

始めに・・・今回のタイトルにもなっている「自然再生」についてお話し下さいました。
「再生」とは以前あった状態に修復する事を目指すのか?
もしくは、以前よりも良いものにしていくという意味も含んでいるのではないかという事を考えると、単純な修復を目指すだけでは「再生」とは言えないのではないか?
また、「以前」とはいったいいつ頃を想定するのか?・・・という議論が考えられます。
また、「自然」は、日本の風土の中では、里山・田んぼなど人の手が加わった状態を思い浮かべる人が多いのではないか?
・・・など、活動に関わる方々が大勢いらっしゃる分、「自然再生」への考えも様々だそうです。

そして次に、「こごめのいり再生プロジェクト」のお話へ。

元々、こごめのいりは、地元の方もあまり近づくことのない場所で、加茂湖の中でも特に汚れている場所でした。なぜ汚れているのかと言うと、周囲が田んぼなので、塩害を防ぐために7〜8mの矢板が入っている場所も多く、水の流れが遮断されてしまうからだそうです。

水の流れの遮断だけでなく、養殖されているカキの殻を湖上で洗うことで、その汚れが溜まってしまう事も要因の一つだとお話し下さいました。
(加茂湖は1920年代からカキの養殖が始まりました。)

加茂湖で漁を行う漁師さんだけでなく、地域の方との話し合いやフィールド調査の結果、こごめのいりを人々が集う豊かな水辺へと再生するためのプロジェクトが実施される事になり、草刈り、ゴミ拾い、ヨシ場の整備、それと合わせて生き物調査などがスタートしました。

この再生プロジェクトの一環として、土砂を取り、カキの殻をすき込みながら湖底の土壌の改善も行っているそうです。漁師さんの知恵と経験を生かしながら、作業を進めているそうです。

加茂湖再生談義」には、漁に携わっている方、近くに住んでいらっしゃる方、遊び場にしている子ども達・・・と様々な方が参加されています。豊田先生が、「談義」を行う際には、都合の悪い話は聞かないのではなく、反対意見はまず最初に伺うのだそうです。そうした話し合い(談義)の結果、加茂湖の自然再生プロジェクトに当初反対されていた地元漁師の方々からの後押しも得られるようになったとのこと。そして、同じ佐渡市にあり、加茂湖へ流れる天王川も含んだ加茂湖水系の自然環境の保全・再生を進める方向へプロジェクトが進み出しました。
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  「談義」をつうじて自然再生へ

ここで、豊田先生に自然再生を進める際の「三つの心得」を伺いました。

●一つ目は、地域の人と談「義」する事
豊田先生曰く・・・
「義」は、正義や義損などの言葉が示唆する通り、「公共の善」を意味します。すなわち、「談義」には、個人的な利害だけでなく、地域にとって大切なことを談ずるという意味が含まれています。異なる背景、関心をもつ人びとが集い、さまざまな考えを重ね合わせながら地域の課題を考える。また、課題を解決していくために新たなアイディアや活動を生み出す・・・談義は、シナリオの無いダイナミックなプロセスです。あらかじめ用意した結論はありません。談義を進めていくためには、与えられた条件のなかでよりよい選択をするために、みんなの意見を持ち寄ってプランを立てていくことの大切さを認識する必要があります。
というお話で、談義の「義」に込められた深い意味を感じました。

●二つ目は、多様な立場の人々を繋ぐ事
漁業者・地域住民・行政・企業・学校・NPOなど色々な立場の方がいらっしゃいますが、異なる立場の方々との繋がりを大事にしながら、カモケンは活動しているそうです。
地元の建設会社の方が、重機を使っての作業に力を貸して下さったり、近くの専門学校の生徒さん達も活動に参加されているというエピソードを伺いました。

●三つ目は、子ども達の声に耳を傾ける事
地元の子ども達もカモケンの活動に参加しています。
子ども達が参加することで、大人を繋いでくれるのだそうです。
大人だけの話し合いの場合、経済的な話になりがちなのが、子ども達が参加すると、倫理的な事柄にも話題が広がるそうです。
子ども達が参加する事で、
・正直な発言
・視点の多様化
・創造的な発想
・世代を繋ぐ
などの特徴が見られるそうで、子ども達は影の立役者のようです。

「加茂湖再生談義」の活動によって、加茂湖に少しずつヨシ原も広がり、人の姿が戻り、子ども達の遊び場にもなってきました。

そして、最終的な再生案の目標として、
(1)山側から流れてくる砂を利用して、自然に浅瀬が形成されるようにする事
(2)そうする事でヨシ原が拡大され、人が容易に入れるような環境が形成される事
の2点を掲げられています。
再生へ向けて少しずつ種を蒔いている活動が、一つ一つ芽を出して行く事を思い描きながら、お話を伺いました。
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お話が一段落したところで、おやつをいただきながら、豊田先生に質問タイムです。

まず、加茂湖の大きさはどれ位でしょうかという質問が出ましたが、湖岸の長さが、17km程だそうです。

また、なぜ「こごめのいり」という名前が付いたのですが?という質問には、
こごめ村の入り江という事で「ごごめのいり」となったというお話をして下さいました。

お話の際、豊田先生が見せて下さったパワーポイントの中に一つ目の可愛いキャラクターがありました。お尋ねしましたところ、加茂湖に棲んでいると言われる妖怪「一目入道」を想像して描いたイラストとのこと。加茂湖が、生き物が住みやすい場所になれば、一つ目入道も喜ぶだろうなぁと思いました。
kamoken5.JPGこんなん?


また、お話の際にお配りいただいた資料には、加茂湖の調査時に発見したという手の平サイズの「クサフグ」の写真がありました。まん丸〜く、体をぷっくり膨らませている様子がとても可愛らしく、つやつやしたクサフグの姿に加茂湖に豊かな自然が再生されている事を感じました。
  
毎月のように訪れるという佐渡島での楽しいエピソードを聞かせていただき、いつか佐渡島へ伺うことを約束し、第6回すいたサイエンスカフェは終了しました。

サイエンスカフェ開催日の前日は、大雨警報が出るという不安定なお天気の中、お越し下さった豊田先生、参加者の皆様、会場を提供して下さったボルカノ様、本当にありがとうございました。


  • 最終更新:2011-10-31 20:32:47

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