第5回「匂いのサイエンスカフェ」レポート

【第5回すいたサイエンスカフェ】は、2011年8月6日(土)に人間・環境学博士 岡本朋子先生をお迎えして「匂いのサイエンスカフェ」と題して開催されました。

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「匂い」のあれこれ・・・について、まずは実際にバラの花を手に取り、お話いただきました。

2種類のバラの花の香り比べです。ほんのり甘い香りがするバラ、ほとんど香りのないバラ・・・と見た目は同じようでも香り方はかなり違います。そして、バラの香りのハンドクリームも配っていただきました。こちらはかなり強い香りで、しばらくバラの甘い香りが手に残っていました。

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匂いは、鼻腔の上部にある嗅細胞(きゅうさいぼう)で感じるそうですが、経験によって「匂い」の感じ方が異なるというお話へ。

そこで、日独の「匂い」の感じ方の違いについて表を見せていただきました。様々な「匂い」を「」、「不快」どちらに感じるのか。

例えば、コーヒーの匂いはドイツ人、日本人とも「」だと感じ、その快・不快度もほぼ同じ数値です。一方、ほうじ茶の匂いを日本人は「」だと感じるのに対して、ドイツ人は「不快」と感じるようです。生活習慣、経験によって「匂い」の捉え方、感じ方が異なってくるという事が分かります。

面白いと思ったのが、青カビチーズについてです。ドイツ人、日本人とも「不快」の方に傾いているのですが、日本人の方が「不快」の数値が少ないのです。ドイツ人の方が青カビチーズの匂いが苦手のようで、意外に感じたのですが、日本には、お味噌、納豆など古くから発酵食品の文化があるからでは?という意見も出て、なるほどと思いました。
 
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次は「生きもののコミュニケーション」のお話です。コミュニケーション方法の例として、下記のものが挙げられました。

・ヒト:言語・動きなど。
・鳥:音・ダンスなど。
・昆虫や植物:化学物質・色・形など。

そして話題は昆虫や植物がコミュニケーション方法として用いている匂いの化学物質「フェロモン」へ。フェロモンは生物が体外に分泌し、同種の個体間で作用する化学物質で、いくつかに分類されます。

・性フェロモン(成熟して交尾が可能なことを他の個体に知らせる。またそれを追って異性を探し当てるのに使われる)
・集合フェロモン(交尾や越冬などのために仲間の集合を促す)
・警報フェロモン(外敵の存在を仲間の個体に知らせる)
・道標フェロモン(餌の場所など、目的地から巣までの道のりにフェロモンを残し、その後を他の個体に辿らせる)

...など、フェロモンはコミュニケーション方法として様々な役割を果たしています。

フェロモンは同種個体間に作用するものというお話でしたが、異種個体間に作用するものは、アレロケミカルと言われ、カイロモンアロモンシノモンがあるそうです。

カイロモン(受け取った個体が利益を得る)の例では、コモドドラゴンが上げられました。舌で空気中の匂いをキャッチし、その匂いを頼りに獲物を獲得します。

アロモン(発した個体が利益を得る)の例では、わさびがあり、昆虫が苦手とする防御物質を出し、食べられないようにします。

ここで面白かったのがキャベツの例でした。キャベツは昆虫に食べられないようにイソチオシアネートという物質を出しているのですが、モンシロチョウはこの物質を気に入り、キャベツを選んで産卵しているそうです。モンシロチョウに気に入られてしまったキャベツの戦略として、幼虫に葉っぱを囓られるとある化学物質を出し、モンシロチョウの幼虫に寄生するアオムシコマユバチを誘い寄せて、モンシロチョウを撃退するのです。

興味深いのは、ハサミでキャベツの葉を切ってもその化学物質は分泌されないのに、幼虫が葉っぱを囓ると分泌されるという点です(隣のキャベツが囓られていても分泌するそうです)。キャベツとモンシロチョウの間でそんな攻防が繰り返されていたとは驚きです。

最後にシノモン(受け取った個体、発した個体両方が利益を得る)の例では、アリのお話が出ました。スミレやカタクリなどの植物はアリに種を運んでもらい、アリはその種の周りにある蜜のようなエライオソームをもらいます。

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植物と昆虫の関係は、持ちつ持たれつの関係もありますが、植物だけ得をする関係もあるようで、面白い動画を見せていただきました。

ハンマーオーキッドというランとコツチバチの映像です。
ハンマーオーキッドの花びらの形がコツチバチのメスに似ているため(メスと同じフェロモンも出しています)、勘違いしたオスが寄ってくるのです。このコツチバチのメスには羽がないため、オスはメスを見つけると抱えて飛んでいく習性があるのですが、相手が本物のメスではなく花びらのため、いくら抱えて飛び立とうとしても飛べません。そうこうしている間にオスの背中に花粉がつく・・・という仕組みになっているのです。メスだと勘違いして懸命に花びらを引っ張っているコツチバチの様子は、なぜだろう?おかしいな・・・という心の声が聞こえてきそうでした。

もう一つ、ナゲナワグモの映像も見せていただきました。
巣でじっと獲物を待つのではなく、巣にぶら下がり、先端にネバネバした玉がついた糸をぶら下げて準備します。そこへ通りかかったガにそのネバネバの玉を投げつけて捕まえるのです。捕まえた時の様子は、やった〜と歓声を上げているようで、クモもじっと眺めていると可愛いものだなと思いました。

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ここでふと疑問です。
岡本先生に「匂い」についてお話いただいてきましたが、空気中にふわふわ漂っている「匂い」をどうやって採集しているのでしょうか。

それは、ヘッドスペース法という方法で、例えばバラの匂いを採集する場合は、バラに袋をかぶせ、吸着剤が詰め込まれている6〜7cm程の細い筒と一緒に2〜3時間ほど置いておくそうです。そうすると、吸着剤にバラの匂いが吸引されるという仕組みです。

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お話も一段落し、最後は楽しい質問タイムです。

キンモクセイはとてもよい香りがするけれど、あの香りはキンモクセイにとって(昆虫が寄ってくるなど)何か有益性があるのですか、という質問。
確かに、なぜあんなに芳しい香りを出しているのでしょう。
キンモクセイは中国から人によって持ち込まれた植物で、日本でのキンモクセイと昆虫との有益な関係性は特にないのでは・・・というお話でした。
ただ、ヒノキの香りのように、昆虫が寄ってこないために匂いを出している植物もあり、植物の香りは昆虫を誘き寄せるものばかりではないようです。

そして、加齢臭の話にも。
成分としては「ノネナール」という成分が分泌されているそうです。首の後ろで一番分泌され、首にしばらく巻いて置いたタオルがあれば、その人の加齢臭の数値が分析出来るとのこと。もしも分析していただいたら、どんな数値が出るのでしょう。知りたいような知りたくないような複雑な気持がします。

などなど・・・その他にも沢山の質問にお答えいただき、終始和やかな雰囲気の中で、第5回すいたサイエンスカフェは終了しました。

岡本先生、お暑い中お越し下さった皆様、本当にありがとうございました。


  • 最終更新:2011-08-25 16:12:39

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